外国人を採用する企業にとって、在留カードの確認は必須の手続きです。在留資格や在留期間、就労制限の有無など、カードの情報を正しく読み取ることが、不法就労のリスクを避ける第一歩になります。本記事では、在留カードの基礎知識から、表面・裏面のチェックポイント、偽造の見抜き方、確認に必要な社内体制まで詳しく解説します。採用担当者が見落としがちな注意点も押さえ、外国人雇用における適正な運用を実現しましょう。

在留カードとは何か採用企業が知るべき基礎知識

在留カードは、出入国在留管理庁が交付する、中長期在留者の法的な滞在資格を証明する公的書類です。外国人を雇用する企業にとって、このカードは単なる身分証明ではなく、就労の可否や在留資格の種類、在留期間などを確認するための重要な情報源となります。
カードの表面には、氏名、生年月日、国籍、在留資格、在留期間などが記載され、裏面には「資格外活動許可欄」などが表示されています。これらの情報を適切に確認することは、企業が法令を遵守した採用活動を行ううえで不可欠です。
とくに資格外活動の有無や就労制限の内容は、採用後の業務内容と適合しているかどうかを判断する大きな材料となります。万が一、在留資格に反した業務に従事させてしまった場合、企業側にも罰則が科される可能性があるため、確認を怠ることはできません。
在留カードの基本構成と記載内容の読み取り方
在留カードには表面と裏面があり、それぞれに企業が確認すべき重要な情報が記載されています。採用時にはカード全体を丁寧にチェックすることが義務であり、特に就労制限の有無や在留資格の範囲を読み解くことが重要です。
表面の確認ポイント
在留カードの表面には以下のような情報が表示されます
- 氏名、生年月日、性別、国籍・地域
- 在留資格(例:技術・人文知識・国際業務など)
- 在留期間の満了日
- 就労制限の有無(「就労不可」「指定された活動に限る」など)
「就労制限の有無」欄に注意が必要です。この欄に「就労不可」と記載されている場合、原則として労働が認められていません。一方、「指定された活動に限る」とある場合は、特定の職種に限定されて就労が可能です。
裏面の確認ポイント
裏面には「資格外活動許可欄」などが記載されており、留学生や家族滞在ビザ保持者が週28時間以内のアルバイトを許可されているかどうかが確認できます。
たとえば
「資格外活動許可原則週28時間以内風俗営業等の従事を除く」
→ アルバイトが可能(ただし風俗関連業務は禁止)
許可欄に何も書かれていない場合
→ 原則アルバイト不可
この欄の確認を怠ると、企業側が不法就労助長罪に問われるリスクもあるため、細心の注意が必要です。
採用時に必ず行うべき在留カードチェックの手順

外国人を採用する企業は、在留カードの確認を形式的な作業ではなく、正確かつ慎重に実施する責任があります。就労が許可されていない外国人を誤って雇用してしまうと、企業は不法就労助長罪などの罰則を受ける可能性があるため、以下のようなチェックフローを整備しておくことが重要です。
目視確認だけでは不十分?企業がとるべきチェックフロー
在留カードの確認フローは以下の4ステップが基本です。
- 本人から在留カードを提示してもらう
- ・初回面接時または内定後に実物を確認
・コピー提出を依頼し、原本と照合
- 表面と裏面を正確に確認
- ・在留資格、在留期間、就労制限、資格外活動許可欄をチェック
・「28時間以内」などの条件の有無を確認
- 有効期限・更新時期の把握
- ・就労開始予定日が在留期限を超えていないかを必ず確認
・雇用開始前に更新が必要な場合、雇用の前提が変わるため要注意
- 不審点がある場合は出入国在留管理庁に確認
- ・在留カードの真正性や内容に疑問がある場合、直接確認を取ることで法的リスクを回避できます
企業はこのプロセスを社内マニュアル化し、担当者全員が同じ手順でチェックできる体制を整えることが求められます。
コピー保管と定期的な更新確認の重要性
在留カードのコピーは、雇用契約書などの書類と一緒に人事ファイルとして保管しておくことが望ましいです。また、在留期間の終了が近づくタイミングで、更新されたカードを必ず再確認することも忘れてはいけません。
- 更新確認は最低でも3ヶ月前から実施
- 期限切れのまま就労させた場合、企業側が処罰対象に
企業側で定期的なスケジュールを管理するか、労務管理ソフトなどで自動通知設定を行うのも有効な対策です。
見落としがちな在留カード確認時の注意点
在留カードの提示を受けたとしても、それだけで安心するのは危険です。在留資格ごとに就労できる業務範囲が異なるため、確認すべきポイントは多岐にわたります。特に留学生や短時間就労の在留資格を持つ人材については、雇用内容との整合性を慎重にチェックする必要があります。
在留資格ごとの就労可能な業務範囲
外国人が日本で就労するには、在留資格ごとに認められる活動内容が法的に定められています。たとえば以下のような違いがあります
- 技術・人文知識・国際業務:エンジニア、通訳、海外営業などの専門職に限る
- 特定技能:介護、建設、外食など特定の業種に限定される
- 永住者/日本人の配偶者等:活動に制限がない(就労自由)
企業が実際に依頼しようとしている業務が、その在留資格の範囲に含まれるかどうかを確認しなければなりません。内容が不一致の場合、不法就労に該当する恐れがあります。
留学生アルバイトのチェックポイント
留学生の在留資格は「留学」であり、原則として就労は認められていません。ただし、「資格外活動許可」を取得している場合に限り、週28時間以内のアルバイトが可能です。
チェックすべき項目
- 在留カードの裏面に「資格外活動許可」の記載があるか
- 「週28時間以内風俗営業等の従事を除く」と明記されているか
- 長期休暇中(夏休み等)は週40時間以内まで可能(別途確認必要)
この条件を超える就労は不法就労に該当し、企業側も罰則の対象になるため注意が必要です。
偽造在留カードへの対応策と確認方法
昨今、偽造在留カードの流通が問題視されています。一見して本物に見える場合でも、裏面やフォント、ICチップの有無などで見分けがつくことがあります。
以下の方法で確認が可能です
- 出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サイトを利用し、カード番号を入力して確認
- カードの表記内容とパスポートの内容に不一致がないかをチェック
- 不審点がある場合は原則、雇用前に採用を保留し、管轄の入管に照会
特に短期滞在や身元不明の外国人を採用する際は、書類確認を第三者に任せず、自社で徹底することが重要です。
就労制限の有無と資格外活動許可欄の見方
在留カードで最も重要なのが、就労が認められているかどうかの判断です。その判断には、「就労制限の有無」と「資格外活動許可欄」の内容が深く関係しています。不適切な判断によって企業が罰則を受けるケースもあるため、正しい見方を理解しておく必要があります。
表面・裏面の確認ポイント
在留カードの確認では、表面と裏面の両方を見ることが基本です。
裏面の記載が空欄である場合、資格外活動許可を得ていない=原則就労不可という判断になります。特に留学生・家族滞在などの在留資格保持者は要注意です。
「風俗営業等の従事」の除外表示
在留カードの資格外活動欄に記載される「風俗営業等の従事を除く」という文言は、外国人雇用の現場において非常に重要な意味を持ちます。これは、風俗営業やそれに準ずる業務に従事することを禁じたものです。
- この表記がないまま該当業種で雇用すると、事業者側が不法就労助長罪に問われる可能性があります。
- 風俗営業等とは、キャバクラ、パチンコ店、深夜営業の飲食店などが含まれるため、業種の範囲を正確に理解する必要があります。
就労可能であっても、在留カードの裏面に「等の従事を除く」と記載があるかを必ず確認しましょう。
就労可能か否かの最終判断
最終的にその外国人が企業で働けるかどうかは、以下の確認を経て判断します。
- 在留カードの在留資格と業務内容の適合性
- 就労制限の有無
- 資格外活動許可の有無(裏面)
- パスポートや他の証明書との整合性
- 出入国在留管理庁サイトでの照会結果
これらを総合的にチェックしたうえで、「問題なく雇用可能である」と判断できるケースのみ採用に進めるべきです。不明点がある場合は、必ず出入国在留管理庁または専門家へ相談しましょう。
企業が行うべき在留カード確認の社内フローと継続的対応

外国人採用において、在留カードの確認は一度限りの作業ではなく、継続的に行うべき管理業務です。採用時の初期チェックだけでなく、在留期間の更新や在留資格変更時にも正確な確認が求められます。企業側が適切な社内フローを整備することで、法令違反のリスクを大きく軽減できます。
入社前確認時の手順と社内共有体制
外国人を採用する際の最初のステップとして、入社前に必ず在留カードを原本で確認し、コピーを保管することが義務付けられています。その際の社内体制として、以下のポイントを押さえましょう。
- 在留資格、在留期間、就労可否の確認
- 本人確認(顔写真・氏名・生年月日)
- 確認結果の記録と、社内共有(人事・労務・配属先)
確認は人事担当者のみでなく、現場責任者とも情報を共有することで、現場での誤認や無許可業務への従事を防ぎます。
更新時期のアラート管理と再確認の必要性
在留カードの有効期限は在留期間に連動しているため、定期的な確認と再チェックが不可欠です。
- 有効期限が近づいた社員には、1〜2か月前に更新準備の案内を出す
- 更新完了後、新しいカードの確認・コピー保管
- 資格変更や家族帯同等、内容の変化がある場合は労務部門で再確認
これらの対応をシステム上でリマインド管理するか、定期的な台帳点検で網羅する体制が重要です。
誤認や怠慢による企業リスクの回避策
在留カード確認を怠る、または誤って就労不可の外国人を雇用した場合、企業は次のようなリスクを負うことになります。
- 不法就労助長罪の適用(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)
- 社会的信用の低下や行政指導の対象
- 人材紹介会社との契約停止、自治体との取引制限など
これらのリスクは、適切なチェック体制と社内教育で回避が可能です。
定期的な研修や業務マニュアルの整備、専門家との連携によって、社内全体の外国人雇用対応力を高めることが求められます。
外国人採用において在留カードの確認は、雇用の適法性を担保する最も基本的かつ重要な手続きです。企業は、採用時に在留資格や就労制限の有無を正確に把握し、原本を確認・記録することが義務づけられています。
さらに、在留期間の更新や資格変更のタイミングでも継続的なチェックと管理が不可欠であり、怠れば不法就労助長などのリスクを招く可能性があります。
法的責任を回避し、安定的な外国人雇用を実現するためにも、社内体制の整備と全社員への意識付けが求められます。
