タイル張り業界における外国人採用の進め方と制度の選び方

タイル張り業界では、慢性的な人手不足や技術継承の難しさに直面し、採用に悩む企業も少なくありません。

• 職人の高齢化で若手が育たず、現場の技術が途絶えそう
• 受注はあるのに人手不足で対応できない
• 外国人を採用したいが制度や手続きが複雑で不安

こうした課題を解決する手段として注目されているのが「外国人採用」です。
本記事では、タイル張り職で活用できる技能実習制度と特定技能制度の仕組みや違い、採用の流れやサポート体制までを徹底解説。

読めば、自社に合った制度選びと円滑な外国人採用の進め方が理解でき、現場の人材確保に役立つ実践的な知識が得られます。

なぜ今、タイル張り業界で外国人採用が注目されているのか

タイル張り業界は、建築物の内外装を仕上げる重要な分野ですが、担い手の高齢化と若手人材の不足に直面している現場が多く存在します。 特に職人技術が求められるため、長期的な技術継承が困難となりつつあり、企業は即戦力かつ継続的に働いてくれる人材の確保を強く求めています。

こうした背景から、外国人材の採用が現実的な選択肢として浸透し始めています。日本の建設業界は、すでに技能実習制度や特定技能制度などを通じて、外国人の就労を段階的に受け入れる仕組みを構築しており、タイル張り職もその対象職種のひとつです。

慢性的な人手不足と技術継承の課題

タイル張り工事は、見た目の美しさだけでなく防水性や耐久性にも直結するため、精密さと熟練度が求められる作業です。そのため、経験豊富な職人の存在は不可欠ですが、近年は以下のような課題が顕在化しています。

現場の主な課題

こうした状況を打開する手段として、外国人材の活用は有効です。技能実習生や特定技能人材を受け入れ、現場で育成する体制を整えることで、一定の技術水準を確保しつつ労働力を安定させることが可能です。

外国人採用は「人手不足を埋めるため」だけではなく、業界全体の継続的な発展のために必要な選択肢といえるでしょう。

外国人を採用するために理解すべき制度の全体像

外国人をタイル張り業務で採用するためには、どのような在留資格であれば就労が可能かを明確に理解しておくことが不可欠です。外国人材の採用は、単に人材を募集するだけではなく、制度に沿った適法な在留資格の下で業務に就かせることが企業側の義務となります。

タイル張り業務は、建設業の一部として技能実習制度や特定技能制度の対象に含まれており、これらを活用することで合法的かつ継続的に外国人を雇用することが可能です。
ここでは、主に活用される在留資格の種類と、それぞれの就労条件を概観します。

主な在留資格と就労可能な制度一覧

以下は、タイル張り業務を含む建設分野での外国人雇用に関連する代表的な在留資格と制度です。

在留資格・制度	就労可否	適用職種の例	主な特徴
技能実習	○	タイル張り（建設仕上げ）	技能移転が目的。最長5年。要監理団体の関与。
特定技能（1号）	○	タイル工、左官など	即戦力型。試験合格必須。生活支援が必要。
技術・人文知識・国際業務	△	設計・管理などホワイトカラー	現場作業は対象外。大学卒業者向け。
永住・定住者など	○	制限なし	日本人と同様に雇用可能。
短期滞在・留学等	×	なし	就労不可、または非常に制限あり。

 ポイント：

今後の外国人材の活用を成功させるには、制度ごとの要件や更新手続き、制限事項などを採用前に十分理解しておくことが重要です。

タイル張り職で活用できる外国人採用制度

外国人をタイル張り職で採用する際に、最も広く利用されているのが技能実習制度です。これは日本での就労を通じて技能を学び、母国の発展に貢献することを目的とする制度であり、単なる労働力確保を目的とした制度ではありません。

タイル張り作業は、「建設分野22職種33作業」のうちの一つとして技能実習制度の対象に含まれており、法的にも認められた形での雇用が可能です。ただし、制度上の目的やルールに基づいた適切な運用が求められるため、採用企業には一定の体制と責任が求められます。

技能実習制度とは？仕組みと対象作業の概要

技能実習制度は、「外国人が日本の企業で働きながら技能を習得し、その技能を母国で活かすこと」を目的とした国際協力制度です。

主な特徴

対象となる作業（タイル張り関連）

注意点

タイル張り業務において技能実習制度を活用することで、一定の技術を持った外国人を段階的に育成することが可能です。
ただし、実務負担や監理団体との連携コストなど、制度特有の手続きも発生するため、制度理解と社内体制の整備が前提条件となります。

技能実習制度と特定技能制度の違いと選び方のポイント

外国人のタイル張り職採用においては、技能実習制度のほかに「特定技能制度」も重要な選択肢となります。どちらも建設業界で外国人材を雇用できる制度ですが、目的・就労条件・支援体制の義務などが大きく異なります。

技能実習生は「技能移転が目的」なのに対し、特定技能は「即戦力としての労働力確保」が目的です。
そのため、企業が制度を選ぶ際には、「何を重視するのか（育成か即戦力か）」を明確にすることが重要です。

タイル職での特定技能外国人の活用可能性

「特定技能1号」は、建設業を含む12分野での現場作業に就労できる在留資格であり、タイル職も対象職種に含まれています。以下に制度の概要と特徴を示します。

特定技能1号の特徴

活用のメリット

比較：技能実習制度との違い（要点整理）

比較項目	技能実習制度	特定技能1号
目的	技能移転・国際貢献	人手不足分野への労働力確保
在留期間	原則3年（最長5年）	最長5年（1年ごと更新）
移行	特定技能1号への移行可	技能実習2号修了者は試験免除
支援体制	監理団体が主体	登録支援機関または企業自身が対応
採用難易度	比較的導入しやすい	試験合格が必要、採用難度はやや高い

 

どちらの制度も、タイル張り業務に対応しており、社内の育成方針や人材戦略に応じて選択が可能です。
「じっくり育てたい」なら技能実習、「すぐに即戦力を確保したい」なら特定技能が適しています。

外国人採用の手続きとタイル張り現場への配属までの流れ

外国人をタイル張り職として採用するには、制度に応じた手続きの理解と、現場配属までの準備が重要です。特に技能実習や特定技能のような在留資格が関わる制度では、行政的な対応・関係機関との連携・生活支援の体制整備など、採用前後に必要な作業が多岐にわたります。

このセクションでは、採用から配属、定着までの一連の流れを簡潔に整理します。

求人から受け入れ準備、定着支援までの実務

外国人を受け入れる場合の主なステップは以下の通りです。制度によって若干の差はありますが、基本的な流れは共通しています。

採用までの基本的な流れ

定着支援のポイント

配属直後の支援が不十分だと、離職や不安定な勤務につながるため、最初の数か月は特に丁寧なフォローが必要です。

また、制度によっては定期的な報告義務（監理団体や出入国在留管理庁への提出）も求められるため、企業内での責任分担も明確にしておくと安心です。

制度選定の注意点と採用後のサポート体制

外国人を採用する際は、制度の違いや在留資格の条件を理解するだけでなく、採用後の現場での対応体制が整っているかどうかが非常に重要です。特にタイル張りのような職人作業では、安全性・言語面・生活面の支援が不足すると、労災や離職などのトラブルに直結する恐れがあります。

企業側には、「人を採ったら終わり」ではなく、継続的に支援し、定着させて戦力化する責任があります。ここでは、制度選定時と配属後に意識すべき具体的なポイントを整理します。

現場教育、日本語支援、安全管理の工夫

制度選定の注意点

タイル張り職の現場では、重い資材の取り扱いや高所作業もあるため、安全意識の定着と日本語理解の促進は特に重要です。

まとめ

タイル張り業界における外国人採用は、人手不足の解消や技術継承の手段として現場に定着しつつあります。 技能実習制度や特定技能制度など、目的や期間が異なる複数の選択肢があるため、自社の状況に合った制度選びと、配属後のサポート体制の整備が成功の鍵となります。採用を単なる労働力補充ではなく、長期的な戦力化に向けた経営施策として捉えることが重要です。