サッシ施工の現場では、建具の取付けや金物加工といった専門的な作業が求められます。しかし、こうした分野でも日本人技能者の高齢化や若手人材の減少により、人手不足が深刻な課題となっています。
以下のような悩みをお持ちの企業も多いのではないでしょうか。
- 施工現場の人手が確保できず、受注や納期に影響が出ているしている
- 外国人採用に関心はあるが、制度や手続きの仕の仕方がよくわからない
- 特定技能や技能実習制度の違いが曖昧なままで不安
この記事では、サッシ施工における外国人雇用のポイントとして、在留資格の種類・制度の特徴・現場での教育と管理体制をわかりやすく解説します。現場品質を落とさずに人材を確保するための実務的な知識が得られる内容となっています。
サッシ施工で求められる人材と人手不足の現状
サッシ施工は、建築現場において建具の取り付け、アルミ製部材の加工・設置、枠まわりの微調整作業などを担う専門職です。戸建住宅から大型施設まで幅広い工事に関与し、建物の品質・安全性・美観に直結する重要なポジションと言えます。
この業務には、建築図面の理解力・手作業の精密さ・現場での柔軟な対応力が求められ、未経験者が短期間で戦力化するのは容易ではありません。そのため従来は熟練の日本人技能者が中心となって担ってきました。
しかし近年では、以下のような課題が顕在化しています。
- 技能者の高齢化が進み、後継者不足が深刻化している
- 若年層の応募が少なく、求人を出しても採用が困難な状況が続いている
- 繁忙期の受注増に対応できず、業務機会を逃している企業も多い
このような背景から、即戦力として活躍が期待できる外国人材の採用が現実的な選択肢として注目されているのです。
建具取り付け作業の内容と技能の必要性
サッシ施工における具体的な作業内容は以下の通りです。
- サッシ枠の組立てと仮設置
- 建具(窓・ドアなど)の搬入・取り付け
- 金物(ヒンジ・クレセント・ストッパー等)の設置と調整
- シーリングやパッキンの施工
- 水平・垂直・開閉確認と最終仕上げ
これらの工程には、次のような専門的技能と現場対応力が必要です。
| 要求スキル | 内容 |
| 寸法管理力 | 設計図との照合、現場寸法との誤差調整 |
| 工具操作 | 電動ドライバー、ボードアンカー、手動工具の正確な扱い |
| コミュニケーション | 職人同士や監督者との意思疎通、日本語理解力も重要 |
| 判断力・対応力 | 納まりが合わない場合の現場合わせや施工変更対応 |
こうした複合的な技能は、教育によって一定程度は習得可能であり、制度を活用することで外国人でも着実にスキルを身に付け、現場で活躍することが可能です。
外国人を雇用する際の制度と在留資格の基本
サッシ施工の現場に外国人を採用する際、まず理解すべきは在留資格の種類と制度の違いです。日本で就労できる外国人にはさまざまな資格がありますが、建設業での現場作業に対応しているのは主に以下の2つです。
- 技能実習制度
- 特定技能制度(特定技能1号)
いずれも建設業分野での外国人雇用に活用可能ですが、制度の目的・在留期間・管理体制が大きく異なるため、混同しないことが重要です。特に、技能実習は技能実習は人手不足対策を目的とした制度ではなく、「技能移転による国際貢献」を目的とした制度(労働力確保として利用することは想定されていない)「人手不足対策」ではなく、あくまで「国際貢献」としての立場で設計されています。
特定技能と技能実習制度の違いと注意点
以下は、両制度の主要な違いをまとめた比較表です。
| 比較項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度(1号) |
| 目的 | 技能移転による国際貢献 | 人手不足分野への即戦力受け入れ |
| 在留期間 | 原則3年 (条件により5年まで延長可) |
最長5年(更新制) |
| 対象者 | 開発途上国の若者 (母国で送り出し機関を通じて選抜) |
技能評価試験・日本語試験に 合格した人材 |
| 雇用形態 | 実習契約(実習計画に基づく) | 労働契約(日本人と同等の待遇) |
| 管理体制 | 監理団体が監督・指導 | 特定技能1号では支援が義務だが、登録支援機関に委託するかは任意(企業が自社で実施してもよい)登録支援機関による支援が義務 |
| 対象作業 | 「建具製作/建具施工(作業:建具取付け等)」が対象職種建具取付け作業が含まれる職種 | 建設分野(建具施工を含む)が対象 |
注意すべきポイント
- 技能実習生を単なる労働力として扱うことは禁止されており、指導・評価・報告が義務付けられています
- 一方、特定技能人材は労働者として正式な雇用契約を結ぶ必要があり、待遇・保険・福利厚生も同等にすることが求められます
- 制度の選択を間違えると不適切雇用となり、法的リスクが生じる可能性があるため、導入前に制度設計の見直しが重要です
両制度は一長一短があるため、企業の受け入れ目的と人材確保の計画に応じて適切な制度を選択することが成功の鍵となります。
サッシ施工に必要な技能・経験・資格の概要
外国人をサッシ施工の現場に受け入れる場合には、対象者が所定の技能や資格を満たしているかどうかを事前に確認することが重要です。特定技能制度を利用する場合には、技能評価試験や日本語能力試験に合格していることが前提条件となります。
また、企業側としても、受け入れ対象者にどの程度の作業を任せられるかを見極めた上で雇用計画を立てることが求められます。これにより、現場での混乱や指導コストの最小化につながります。
技能評価試験と日本語能力の確認方法
外国人材が特定技能1号でサッシ施工に従事するには、主に以下の試験と基準をクリアする必要があります。
| 項目 | 内容 |
| 技能評価試験(建設分野) | 建設分野における作業試験。「建具施工(建具取付け等)」の作業区分が対象。建具取り付けなどの職種が対象。年数回実施され、合格すれば技能認定を取得可能 |
| 日本語能力試験(JFT-BasicまたはJLPT N4以上) | 現場での基本的なコミュニケーション力を証明。指示理解・安全確認などに必須 |
| 建設キャリアアップシステム(CCUS)登録 | 特定技能(建設分野)での就労には、CCUS登録が必須原則義務。施工経験や保有スキルを可視化できる制度 |
| 在留資格取得手続き | 合格証明書・雇用契約書・支援計画などを添えて出入国在留管理庁へ申請。審査通過後に在留資格が交付される |
実務上の注意点
- 受験者が試験会場にアクセスしやすいよう、試験日程や場所の事前確認とサポートが必要
- 日本語能力が不足している場合は、社内での指導やeラーニング教材の活用を検討する
- 技能評価試験の内容は職種によって異なるため、「建設:建具取付け等」が対象になっていることを確認する
これらの条件を満たした上で、外国人材がサッシ施工の現場に従事すれば、安全かつ効果的に作業を任せることが可能となります。
採用から就労開始までの具体的な流れ
外国人材をサッシ施工の現場で雇用するには、制度上の手続きだけでなく、実務上の段取りも重要です。採用活動の開始から、現場での就労開始までには複数のステップがあり、計画的な進行が求められます。
採用プロセスをスムーズに進めるには、以下のような全体像を事前に把握しておくことが有効です。
□ 採用ルートの選定(国内在留者か海外人材か)
□ 面接・選考の方法と通訳対応の準備
□ 在留資格の取得に必要な書類の整備
□ 社内の受け入れ準備(教育・管理体制)
□ 支援機関や行政機関との連携
手続きの遅れや不備は就労開始の遅延や不許可のリスクに直結するため、企業側の責任でスケジュール管理を徹底する必要があります。
| 実務対応 | 要点 |
| 求人の設計 | サッシ施工経験者や建設分野の特定技能保持者を明記することで、的確な人材の応募が期待できる |
| 面接時の確認事項 | 日本語能力、過去の建設作業経験、就労希望期間、文化・宗教的配慮が必要かどうかなど |
| 申請書類の整備 | 雇用契約書、住居案内、労働条件通知書、支援計画書類を漏れなく準備 |
| 配属後のフォロー | 入社初日にガイダンスを実施し、労働条件・安全管理・報告体制について明確に伝えることが重要 |
採用から配属までの流れを可視化し、社内で一貫した対応体制を構築することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
外国人材の教育・サポートと現場定着策
サッシ施工の現場で外国人材が安定的に働き続けるためには、採用後の教育・支援体制の充実が欠かせません。制度面の対応だけでなく、現場における安全管理、業務理解、日本語の習熟、生活支援などが重要な要素となります。
特にサッシ施工のように正確さと安全性が求められる作業においては、誤解や事故を未然に防ぐ環境づくりが企業の責任として求められます。
以下のような支援が実務上効果的です。
- 入社直後の安全教育・工具の使い方研修
- 作業マニュアルの整備と日本語翻訳の併用
- 定期的な個別面談による精神的ケア
- 生活面でのフォロー(住居、通勤、保険、行政手続きの支援)
これらの取り組みによって、技能の習得スピードが上がり、現場への定着率も高まるという効果が期待できます。
安全管理、日本語支援、生活フォローの実践
以下に、外国人材の支援項目を領域別に整理したマトリクスを示します。
| 領域 | 支援内容 | 実施タイミング |
| 安全管理 | 作業手順の視覚化、KY活動(危険予知)、ヒヤリハット共有 | 配属初日~定期的に実施 |
| 日本語支援 | 図解入りマニュアル、建設用語集の配布、翻訳アプリ活用 | 入社直後~業務に慣れるまで |
| 技術教育 | サッシの取り付け方、金物施工手順、道具の使い方 | 就労前研修~現場配属後 |
| 生活支援 | 住居の案内、交通機関の使い方、病院や買い物の情報提供 | 入国直後~初期定着まで |
| 精神的サポート | 面談、相談窓口の設置、同国出身者との交流支援 | 継続的に実施(特に入社後3か月間) |
こうした支援の積み重ねが、外国人材にとって「働きやすい職場環境」となり、離職率の低下や施工品質の安定にもつながります。
単なる雇用ではなく、「共に働く仲間」として迎え入れる姿勢が成功の鍵となるでしょう。
まとめ
サッシ施工の分野で外国人を採用するには、特定技能や技能実習制度の正確な理解と適切な手続きが欠かせません。さらに、安全教育や日本語支援、生活面でのフォローを徹底することで、現場定着と施工品質の維持が実現します。制度目的を誤解せず、計画的な受け入れとサポート体制の構築が成功の鍵となります。


