現場の人手不足に悩む建設業界では、表装・壁装分野における外国人材の受け入れが注目されています。しかし、特定技能や技能実習制度に関する手続きや条件は複雑で、正しい知識がなければトラブルの原因になることもあります。
以下のような課題を感じていませんか?
- 特定技能と技能実習の違いがよく分からない
- どの作業が外国人に認められているのか不安
- 雇用後の教育や支援体制に自信がない
本記事では、表装・壁装分野で外国人材を採用する際に必要な在留資格や作業内容、教育の進め方をわかりやすく解説します。企業が安心して受け入れを進めるための実務知識と注意点を網羅し、人材不足を補いつつ、品質を維持するための具体策を紹介します。

建設業界の人手不足と外国人雇用の背景

建設業界では長年にわたり人手不足が深刻化しており、特に表装・壁装のような内装仕上げ分野では技能を持つ職人の高齢化と若年層の離職が進んでいます。このような状況の中で、外国人材の雇用が現場の戦力として期待されているのが現状です。
2023年時点での国土交通省の統計によると、建設業就業者の約3割が55歳以上を占める一方で、29歳以下の若年層は全体の約10%未満にとどまっています。こうした構造的な人材不足に対応するため、政府は特定技能制度などの導入を進め、外国人材の活用を制度的に後押ししています。
建設業界において外国人が就労する制度には主に以下の2つがあります。
| 制度 | 主な目的 | 対象職種 | 就労年数 | 雇用形態 |
| 技能実習制度 | 国際貢献(技術移転) | 一部の建設作業 | 最長5年 | 実習生(育成枠) |
| 特定技能制度 | 即戦力の確保 | 12職種27作業(表装含む) | 最大5年(1号)・無期限(2号) | 労働者(労働契約) |
この2つの制度は目的や雇用形態、就労年数などが大きく異なるため、自社のニーズに合わせて適切な制度を選択することが重要です。
表装・壁装が抱える人材難と今後の課題
表装・壁装の作業は専門性が高く、繊細な技術と集中力を要します。壁紙の張り替えや下地処理、パテ塗り、糊の調整といった作業は、短期的な育成が難しく、職人の経験値が仕上がりに直結する分野です。
しかし、現在の表装業界では以下のような課題が深刻化しています。
- ベテランの退職により、技術の継承が困難
- 若手日本人の採用が極めて困難な状態
- 短期雇用では品質が安定せず、顧客満足度に影響
このような背景から、外国人材を長期的に育成し、戦力として定着させる仕組みづくりが重要視されています。とりわけ、特定技能制度の導入により、表装分野での外国人雇用が正式に認められたことは、企業にとって大きなチャンスです。
特定技能と技能実習の違いを整理する
外国人材の受け入れを検討する企業がまず直面するのが、「特定技能と技能実習の違いがわからない」という問題です。どちらも外国人が建設現場で働く制度ですが、目的・制度の仕組み・企業に求められる責任が大きく異なります。混同すると法令違反やトラブルにつながる恐れがあるため、事前に正確な理解が必要です。
それぞれの制度の違いを下記に整理します。
| 項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
| 目的 | 開発途上国への技術移転(国際貢献) | 国内の深刻な人手不足への対応 |
| 対象者 | 技能を習得する意欲のある実習生 | 即戦力として働ける外国人 |
| 在留期間 | 最長5年(1〜3号) | 最長5年(1号)/無期限(2号) |
| 雇用契約 | 実習計画に基づく | 一般的な労働契約(労基法適用) |
| 支援体制 | 監理団体が指導・監査 | 登録支援機関または企業自身が支援義務を負う |
| 移行可能性 | 特定技能1号へ移行可能 | 2号へ移行で永続雇用も視野に |
技能実習は「人材育成」、特定技能は「人手不足解消」が主眼です。したがって、現場で即戦力を求める企業にとっては、特定技能のほうが実務的に適している場合が多くあります。
制度の目的、適用条件、企業側の責任を比較
技能実習制度は、教育的な性質が強く、企業は技能の習得を目的とした「実習計画」に基づいて受け入れを行います。法令順守や監理団体との連携が求められ、違反時のリスクも高くなります。
一方、特定技能制度は労働契約に基づく就労であるため、企業は一般労働者と同様に賃金・労働時間・保険・安全衛生などの管理責任を負います。また、外国人が生活面で困らないよう、以下のような支援を行う必要があります。
- 日本語学習の支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 住居確保と契約サポート
- 病院への同行や相談対応
これらの支援は、企業自身が実施するか、登録支援機関に委託することが可能です。ただし、委託する場合でも支援実施の責任は企業にあるため、体制構築が不可欠です。
表装・壁装作業で認められている職種と範囲
外国人を表装・壁装分野で雇用するには、法令で定められた作業範囲や条件を正しく理解する必要があります。特定技能制度の建設分野では、現在12職種・27作業が対象とされており、表装作業(内装仕上げ施工)はその一部として正式に認められています。
認定対象作業・工程と技術水準の要件を理解
表装作業において、外国人が従事できる代表的な作業は以下のとおりです。
- 壁紙や床材の下地処理(パテ塗り・ケレン作業)
- 壁紙や床材の裁断および貼り付け
- 糊の調合や接着剤の扱いに関する作業
- 施工後の仕上げや清掃などの軽作業
ただし、これらの作業を外国人が行うためには、以下のような要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
| 試験合格 | 「建設特定技能評価試験(表装作業分野)」に合格していること |
| 実務経験 | 技能実習2号を良好に修了した者も対象となる |
| 在留資格 | 「特定技能1号」として在留が許可されていること |
| 雇用主の要件 | 建設業許可を有する企業であること、就労環境が整備されていること |
また、実際の現場では、精度の高い施工技術が求められるため、外国人材には基礎知識だけでなく、細かい作業に対する注意力や責任感も必要とされます。そのため、採用後の現場指導が非常に重要です。
企業は、作業内容の範囲が制度上で認められているかを常に確認し、違法な業務従事をさせない体制づくりが求められます。とくに、建築資材の運搬や管理業務など、明確に作業対象外となるケースには注意が必要です。

外国人を採用するための必要な手続き
外国人材を表装・壁装の現場で採用するためには、在留資格の取得や各種手続きを段階的に進める必要があります。特定技能制度を利用する場合、要件を満たす人材を採用し、法令に基づいた申請・支援体制を整えなければなりません。
特定技能1号の在留資格を取得するには、以下のいずれかの条件を満たすことが必要です。
□ 「建設分野特定技能評価試験(表装作業)」に合格している
□ 技能実習2号を良好に修了している(表装に限る)
在留資格の取得、登録支援、雇用契約の流れ
採用から在留資格の取得、実際の雇用までの流れは以下のように整理できます。
| 手順 | 内容 |
| ① 求人・面接 | 候補者の選定、日本語力や作業経験の確認 |
| ② 試験合格の確認 | 特定技能評価試験の合格証明または技能実習修了証明の取得 |
| ③ 雇用契約の締結 | 労働条件通知書を作成し、契約書を交わす(法令遵守が前提) |
| ④ 在留資格認定証明書の申請 | 出入国在留管理庁に対し、雇用予定者の情報を基に申請 |
| ⑤ 支援計画の策定・提出 | 登録支援機関を活用、または自社で生活・就労支援を計画 |
| ⑥ 在留資格の取得・入国 | 認定後、入国手続き・在留カード交付を受けて入国可能に |
支援計画では、以下の項目について企業側の対応が求められます。
- 生活支援(住居確保、銀行口座開設支援、交通機関の案内など)
- 日本語教育の機会提供
- 労働法令や文化に関する情報提供
- 相談対応窓口の設置や通訳サポート
なお、これらの支援業務は登録支援機関に外部委託することも可能ですが、その場合も企業側に最終的な責任があることを理解しておく必要があります。
不備のある書類や支援体制の欠如は、在留資格の不許可や認定取り消しといったリスクにつながるため、慎重な準備が求められます。

技能習得と現場教育のポイント
表装・壁装分野では、採用した外国人材がすぐに戦力化するとは限りません。技能の定着や品質の安定には、計画的な現場教育と長期的な育成が不可欠です。特に日本語や文化の違いに配慮した指導が重要となります。
教育体制を整えることで、外国人材の早期離職を防ぎ、企業にとっても長期的な人材確保につながります。
OJT・日本語教育・安全衛生教育の実践方法
外国人材の育成においては、以下の3つの柱を軸に教育を設計することが効果的です。
- OJT(On-the-Job Training)
現場での実作業を通じて、技能を習得していく方法です。以下の点に注意しましょう。 - 工程ごとにマニュアル化し、段階的に習得させる
- 専任指導者(トレーナー)を配置し、定期的に進捗確認を行う
- 失敗を許容する「試せる環境」を用意する
- 日本語教育支援
言語の壁は、作業効率や安全性に直接影響を与えます。以下のような取り組みが推奨されます。 - 日常会話レベルの日本語教材の提供
- 朝礼や作業指示で使う用語を事前に共有
- 通訳アプリや翻訳ツールの活用も検討
- 安全衛生教育の徹底
建設現場では安全第一が原則です。言語だけでなく、「視覚教材」や「実演指導」も取り入れ、理解度を高める工夫が必要です。
これらを統合した教育体制を構築するためには、企業文化や現場環境にあわせて柔軟に設計することが鍵です。また、定期的に指導方法の見直しを行うことで、教育効果を高めることができます。
結果として、外国人材が「働きがい」を感じられる環境が整えば、技能の習得と定着率の向上が両立できるようになります。
まとめ
表装・壁装分野における外国人材の受け入れには、特定技能と技能実習の制度理解、適切な在留資格取得、丁寧な現場教育が欠かせません。制度ごとの目的や作業範囲を正しく把握し、支援体制や法令順守のもとで受け入れを進めることで、人材不足の解消と品質の両立が可能になります。企業が実務的な準備と継続的な教育に取り組むことで、外国人材との共存と成長が実現できます。

