日本で外国人を雇用する際には、適切な就労ビザ(在留資格)を取得することが必要です。就労ビザにはさまざまな種類があり、職種や業務内容によって取得できるビザが異なります。また、適切な手続きを踏まなければ、不法就労となるリスクもあるため、企業は十分な注意が必要です。
本記事では、就労ビザの基本的な仕組み、種類、申請方法、注意点について詳しく解説します。外国人を雇用する企業担当者や、就労ビザの取得を検討している外国人本人にとって、正しい知識を身につけ、スムーズな雇用を実現するための参考になれば幸いです。
就労ビザとは?在留資格との違い
外国人が日本で働くためには、適切な「在留資格(就労ビザ)」を取得する必要があります。しかし、「就労ビザ」と「在留資格」は厳密には異なるため、その違いを理解しておくことが重要です。
就労ビザと在留資格の違い
- 就労ビザ(一般的な呼び方)
外国人が日本で働くために必要なビザの総称。 - 在留資格(正式な制度名)
日本の出入国在留管理庁が定める「外国人が日本でできる活動の範囲」。
就労ビザは、正式には「在留資格」の一つであり、職種ごとに異なる在留資格が割り当てられる仕組みになっています。例えば、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」といった在留資格があり、それぞれ対象となる業務内容が決められています。
就労ビザが必要なケースと不要なケース
【就労ビザが必要なケース】
- 外国人を正社員・契約社員として雇用する場合
- 専門的な職種(エンジニア・通訳・飲食業など)に従事する場合
【就労ビザが不要なケース】
- 永住者・定住者・日本人の配偶者等の在留資格を持つ外国人
- 留学生のアルバイト(資格外活動許可が必要)
企業が外国人を採用する際は、対象者が適切な就労ビザを取得できるかどうかを事前に確認し、雇用の可否を判断することが重要です。
就労ビザの種類と対象職種
外国人が日本で働くための就労ビザ(在留資格)は、職種や業務内容によって異なる種類が存在します。企業は、雇用する外国人の職種に適したビザを取得させる必要があるため、事前に確認が必要です。
主な就労ビザの種類
在留資格 | 対象となる職種・業務 |
技術・人文知識・国際業務 | エンジニア、事務職、通訳、デザイナーなど |
特定技能 | 介護、建設、外食、製造業など人手不足の業種 |
高度専門職 | 高度な技術・知識を持つ研究者、専門職 |
経営・管理 | 外国人が日本で会社を経営する場合 |
それぞれのビザには取得条件があり、学歴や職歴、業務内容が審査基準に適合する必要があります。
技術・人文知識・国際業務
【概要】
このビザは、**ホワイトカラー系の職種(エンジニア・事務職・通訳など)**で働く外国人を対象としています。最も一般的な就労ビザの一つであり、多くの企業で採用されています。
【対象職種の例】
- エンジニア(IT・機械・電子など)
- 通訳・翻訳・貿易業務
- マーケティング・コンサルタント
- デザイナー・クリエイティブ職
【取得要件】
- 大学卒業(または同等の学歴)が必要(専攻と業務内容が関連していること)。
- 実務経験が一定年数以上必要なケースあり(業種による)。
このビザは、単純労働には適用されず、高度な知識や技術を必要とする業務に限定されるため、雇用前に要件を十分に確認することが大切です。
特定技能ビザ
【概要】
特定技能ビザは、日本の人手不足を補うために設けられた就労ビザで、特定の産業分野に限定されるのが特徴です。学歴の要件がなく、技能試験や日本語能力試験に合格すれば取得可能なため、多くの企業で活用が進んでいます。
【対象職種の例(特定技能1号)】
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 自動車運送業
- 鉄道
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業
- 木材産業
【取得要件】
- 各分野ごとの技能試験に合格すること。
- 日本語能力試験(N4相当以上)に合格すること。
- 企業が特定技能外国人を支援する体制を整えること。
【特定技能のポイント】
- 特定技能1号と2号の2種類があり、1号は単純労働も可能だが、2号はより高度な技能が必要。
- 在留期間の上限は「1号は5年」、「2号は更新可能で永住申請も可能」。
- 「技能実習」からの移行が可能なため、企業が育成した外国人材を長期雇用しやすい。
このビザは、採用要件が比較的緩やかで、多くの企業が活用できる一方、受け入れ企業には外国人労働者の生活支援などの義務が課せられるため、適切な管理が求められます。
高度専門職ビザ
【概要】
高度専門職ビザは、高度な知識や技術を持つ外国人を対象とした就労ビザです。通常の就労ビザよりも優遇措置が多く、永住権取得の短縮や家族の帯同が容易になるといったメリットがあります。
【対象職種の例】
- 先端技術分野の研究者・技術者
(AI・ロボット開発・バイオテクノロジーなど) - 高度な専門知識を持つエンジニア・コンサルタント
- 大学教授・研究機関の研究者
【取得要件】
- 学歴・職歴・年収などをポイント制で評価し、70点以上を獲得することが必要。
- 学歴(修士号・博士号)、実務経験、年収、研究実績などが評価対象。
【高度専門職ビザのメリット】
- 永住権の取得が早まる(通常10年→高度専門職なら最短1年)
- 家族の帯同が認められやすく、配偶者も就労が可能
- 出入国手続きが優遇され、長期間の在留が可能
このビザは、日本の経済発展を支えるための優遇措置が多く、高度なスキルを持つ外国人にとって魅力的な制度となっています。
経営・管理ビザ
【概要】
経営・管理ビザは、外国人が日本で会社を設立し、経営や管理業務を行うための在留資格です。起業家や企業の経営幹部が対象となり、会社の設立要件や資本金の規定を満たす必要があります。
【対象となる活動】
- 日本で新たに会社を設立し、事業を運営する。
- 既存の日本企業の役員や経営者として事業を管理する。
【取得要件】
- 最低資本金500万円以上を準備すること。
- 日本にオフィス(事務所)を設置すること。
- 事業計画書を作成し、持続可能な経営が可能であることを証明する。
- 企業が実際に経営活動を行っていることを示す証拠(契約書・顧客リストなど)が必要。
【経営・管理ビザのメリット】
- 自らの会社を持ち、日本での長期的なビジネス展開が可能。
- 経営が安定すれば、永住権の申請も可能。
- 配偶者や子どもを帯同し、長期間の滞在がしやすい。
このビザは、外国人起業家が日本市場に参入するための重要な手段であり、日本で事業を展開する上で欠かせない制度となっています。
就労ビザの申請方法と必要書類
外国人を雇用する際には、適切な就労ビザを取得し、正しい手続きを行うことが重要です。申請の流れを理解し、必要書類を準備することで、スムーズな就労ビザの取得が可能になります。
申請の基本的な流れ
- 雇用契約の締結
- 外国人本人と正式な労働契約を結ぶ。
- 必要書類の準備
- 企業と外国人本人の双方が必要書類を準備する。
- 在留資格認定証明書(COE)の申請
- 出入国在留管理庁に必要書類を提出し、在留資格の認定を受ける。
- 在留資格認定証明書の発行
- 認定証明書が発行されると、外国人本人がビザ申請を行える。
- ビザ申請・取得
- 外国人本人が日本の大使館・領事館でビザを申請し、取得する。
- 入国・在留カードの受領
- 日本入国時に在留カードを受け取り、正式に就労開始。
企業が準備すべき書類
- 会社の登記簿謄本
(3カ月以内に発行されたもの) - 会社案内・パンフレット
(事業内容がわかるもの) - 雇用契約書
(労働条件や給与の明記) - 決算書・納税証明書
(財務状況の確認)
外国人本人が準備すべき書類
- 履歴書・職務経歴書
(学歴・職歴の証明) - 卒業証明書・成績証明書
(学歴要件の確認) - パスポートのコピー
- 証明写真(3カ月以内に撮影)
申請内容に不備があると審査が長引く可能性があるため、事前に正確な書類を揃えておくことが重要です。
審査基準と許可のポイント
就労ビザの取得には、出入国在留管理庁による厳格な審査が行われます。審査に通過するためには、外国人本人の適性と、雇用する企業の安定性が重要なポイントとなります。
審査の主な基準
審査項目 | 主なチェックポイント |
学歴・職歴 | 学歴・職歴が申請する在留資格の業務内容と一致しているか |
職種・業務内容 | 就労ビザの対象となる職種に該当するか |
雇用条件 | 日本人と同等以上の待遇・給与が保証されているか |
企業の財務状況 | 会社の経営が安定しており、雇用継続が可能か |
過去の不法就労歴 | 申請者に不法就労歴がないか |
学歴や職歴の要件
- 「技術・人文知識・国際業務」ビザの場合、大学卒業または10年以上の実務経験が必要。
- 特定技能ビザは学歴要件なし。ただし技能試験・日本語試験の合格が必要。
- 高度専門職ビザは、修士号・博士号を持っていると審査が通りやすい。
就労先企業の審査基準
- 設立されたばかりの企業や売上が不安定な企業は、審査に時間がかかる場合がある。
- 過去に不正な外国人雇用を行った企業は、許可が下りにくい。
就労ビザを確実に取得するためには、事前に要件を満たしているか確認し、不足があれば補強資料を準備することが重要です。
就労ビザ申請時の注意点
就労ビザの申請には、法律に基づいた適切な手続きが求められ、注意すべきポイントがいくつか存在します。不備があると申請が却下される可能性があるため、慎重に準備を進めることが重要です。
不法就労にならないための対策
- 適切な在留資格を取得しているか確認する
(対象外の職種で働かせると不法就労となる) - 在留資格が切れていないか、在留期間を管理する
- アルバイト採用時は「資格外活動許可」が必要
在留期間の更新手続き
- 就労ビザの在留期間は「1年・3年・5年」などがあり、期限前に更新申請を行う必要がある
- 更新の際は、直近の給与明細や納税証明書が求められるため、企業側も書類準備を徹底する
- 契約内容の変更(給与・勤務時間など)がある場合は、更新時に申請内容を正しく反映させる
転職時のビザ変更手続き
- 就労ビザは、業務内容に応じたものが発給されるため、転職後に職種が変わる場合は「在留資格変更許可申請」が必要
- 転職後も適正な雇用条件であることを証明できなければ、ビザ更新が認められない可能性がある
外国人を採用する企業は、不法就労を防ぐために、在留資格や雇用条件を適切に管理することが求められる。トラブルを未然に防ぐためにも、事前に手続きの流れを把握し、必要な書類を確実に準備することが重要です。
まとめ:適切な就労ビザを取得し、外国人雇用を成功させよう
外国人を雇用する際には、業務内容に適した就労ビザを取得し、適切な手続きを進めることが重要です。就労ビザにはさまざまな種類があり、それぞれ学歴・職歴・業務内容などの審査基準が異なります。
企業がスムーズに外国人を採用し、長期的に安定した雇用を実現するためには、以下のポイントを押さえておくことが不可欠です。
- 職種に応じた適切なビザを選択する(技術・人文知識・国際業務、特定技能など)
- 必要書類を事前に準備し、申請内容に不備がないよう確認する
- 在留資格の管理を徹底し、不法就労を防ぐ体制を整える
- 在留期間の更新や転職時の手続きを確実に行う
適切な就労ビザの取得と適正な管理を行うことで、外国人労働者が安心して働ける環境を整え、企業の成長にも貢献できるでしょう。
企業様の人手不足を解消する有効な手段として、外国人労働者を採用される企業様が増えています。本記事をご覧いただいた企業様についても、人手不足の解消に向けて外国人労働者採用を検討されてみてはいかがでしょうか。
外国人採用の基礎の解説については外国人採用の基礎!雇用のメリットや注意点、費用などを丸ごと解説をご参照ください。